2016年1月24日日曜日

師範の単独ゼミ5 鷲林寺周辺

ブログのデザインを変えたら殺風景になった師範です.
今日は特に何目当てというわけでもなく,とりあえず沢へ向かいました.もう沢依存症に近いです.


それにしても寒かったです.水の滴るところにはつららができてました.
奄美大島では今日115年ぶりに雪が観測されたそうですね.どんだけ〜

ここは悲しいほどサラッサラの花崗岩なので沢掘りしても地下浅層の昆虫はあまり期待できないですが,沢を見ると掘らずにはいられなくなる症状が出たので掘りました.

サラサラサラサラサラ…

ヒメハネカクシ族 Athetiniの一種が出てきただけでした.
このグループは,甲虫の中で同定の難しいハネカクシ類の中でも特に同定困難な分類群の一つだと思います.
Atheta属かなと思ってるのですが,手元に文献がないのでよくわかりません.

ヒメハネカクシ族の一種

そのあと別の沢に移り,凍えながらヒメドロを採ってみたら,この辺りでは普通種のアカモンミゾドロムシ Ordobrevia maculataがいました.
アカモンも真冬に採れるんですね.

アカモンミゾドロムシ

材割りやコケ掃きもやりましたが,たいしたものはいませんでした.
寒すぎるので今日は早めに引き上げました.
帰り道,昨年キベリハムシ Oides bowringiiが見られた場所に寄って卵を見つけました.

キベリハムシの卵塊

キベリハムシは明治頃に中国から入ってきたと考えられている帰化昆虫で,日本のものは雌のみで単為生殖することが知られています.
卵は卵塊状になっていて,葉柄と蔓の分かれ目に産み付けられていることが多いです.そして卵の状態で越冬します.
ホストは,百人一首でもお馴染みのサネカズラです.常緑なので今の時期でも探しやすい植物です.


さて,明日からはまたデスクワーク頑張ります.

2016年1月11日月曜日

師範の単独ゼミ4 生駒山麓

最近チビゴミに毒されている師範です.
昨日は生駒山麓へ出動していました.
お察しの通り,狙いはイコマメクラチビゴミムシ Stygiotrechus itoiです.

電車で文献記録のある場所付近まで行き,その周辺の沢へ向かいました.
Ashida & Kitayama(2003)の原記載によると,イコマメクラが最初に発見されたのは石の下からだそうですが,レアケースかもしれないので王道の沢掘りをしました.
生駒山麓は主に花崗岩からなるので,先週行った場所とは異なり,一見チビゴミのいなさそうな地質です.
いくつか沢をまわってみましたが,案の定いい場所が全然ありません.


こんなところにチビゴミがいるのかと疑問を抱きつつ,せっかく来て掘らずに帰るわけにはいかず,師範はひたすら斜面にピッケルを振り下ろし続けるのでした.


サラサラ流れる土...奪われる体力...漂う無理ゲー感...



…はい.ということで,この日見られた甲虫はセンチコガネ Phelotrupes laevistriatusとアカバハネカクシ Platydracus brevicorniのみでした.
ともに光の速さでリリース.
チビゴミに集中していて,材割りや水昆探しは今回できませんでした.
ツルグレンに期待して,沢沿いの落ち葉だけ持ち帰りました.
悲しすぎる…何も採ってないのに手は痛いです.

採れなさすぎて記録することがないので,生駒山に因む虫の話でも書きます.
関西の虫屋なら一度はお世話になるであろう生駒山ですが,金剛山などに比べると,その名前がつく昆虫は少ないです.
甲虫ではイコマメクラとイコマケシツチゾウムシ Trachyphloeosoma advenaぐらいだと思います.
もっとも,後者は生駒の標本をもとに記載されたものの,現在では別種のシノニムとして扱われているのですが.
そんなわけでイコマメクラは数少ない生駒特産種なのです.
また,コンゴウメクラチビゴミムシ群の北限種なので学術的にも貴重だと思います.
こんないい虫に会うためなら,またリベンジしたいです.


<追記>
帰宅後,沢で集めた落ち葉をツルグレンにかけました.

師範流 自作ツルグレン装置

落ち葉を入れている容器は底が網目状になっていて,出てきた生き物が下のロートの先端にあるチューブに集まります.
チューブにはエタノールを少し入れています.
あとは上部を目の細かいネットで覆い,ライトを当てて一晩おきます.


そしたらこんなムネボソヨツメハネカクシ属の一種 Boreaphilus sp.が出てきました.
Boreaphilusとしましたが,近縁な仲間にArchaeoboreaphilusPlaneboreaphilusなどがあって難しいです)

Boreaphilus sp.

日本産ハネカクシ科総目録(柴田ほか,2013)によれば,Boreaphilusは日本から5種知られているようですが,私の力量ではちょっと種まで落とせる自信ないです.

2016年1月10日日曜日

メモ的なモノ

あけましておめでとうございます,りんです.
メンバー紹介の最後にこっそり水ポチャ芸人と付け足されていますが,
今年は水ポチャしないよう頑張ります.
まずは長靴買い直さなくちゃ...

さて,卒論を前にして突如現実逃避したくなったところで
思い浮かんだことがあります.
それは寄主とその寄生虫の寄生率についてです.
パッと思いついた程度であり,参考書等もろくに見ないで書き出したものなので
色々ツッコミはあると思いますがお付き合いください.

気になることは,飼育下で寄主に寄生虫を感染させた場合,
その生存率(成功率)はどうなるのかということです.
この場合の成功とは,寄生された状態で一般的に繁殖能力を持てる齢
になることとします.

飼育下で寄主に寄生させた場合の生存率:S
野生下寄主寄生率:I
1つの卵塊から産まれ寄生が可能になるまで生き延びた個体数:N
病死率:L
被捕食率:P
とする.
ここで,1つの卵塊あたりの寄生個体数は,
IN(1-L-P) …①
飼育下において,1つの卵塊から産まれ寄生が可能になった個体
全てに寄生させたとき,繁殖能力を持てる齢になる個体数は,
N(1-L)
つまり,
S=N(1-L)/N=1-L…②
②を①に代入して,
IN(S-P)…③

ここまで,寄生虫が寄主の生存率に与える影響は無視されています.
実はここから具体的な生物を代入したいからで,
その生物は繁殖能力も持てる齢になるまで寄主の生存率を変化させない
可能性があるためだ.
それを仮定した場合,③の式が正であるためにはS-P>0となる必要がある.
つまり非常に高い生存率が求められることが考えられる.
しかしこの生物の野外寄生率は数%と言われており,
なーにか引っかかるなあ…

以上メモ書きでした.





2016年1月3日日曜日

師範の単独ゼミ3 採り初め

師範です.
2016年の初陣に行って参りました.
場所は…採集品でだいたいバレてしまうと思います笑.
以前から行ってみたかったところです.

目的地近くまではバスで移動し,バス停横から林道に入っていきました.
林道に沿って川が流れていて,一部湿地っぽい場所もあるような,そんな林道です.
良さそうな枯沢でもないかと思って歩くも,そういう場所はなかなかありません.
しばらく歩くとやっと良さげな沢があったので入ってみることに.

斜面の土を掘ってみるとオオオサムシ Carabus dehaanii dehaanii,ミヤマヒサゴゴミムシ Broscosoma doenitzi,ルリヒラタゴミムシ Dicranoncus femoralisがいました.
ミヤマヒサゴは久しぶりでした.くびれのある変な形をしていて好きです.後翅は退化しています.

ミヤマヒサゴゴミムシ

ここはオオクワの産地としても知られていた場所らしいので朽木も割りましたが,出てきたのはコクワガタ Dorcus rectus rectusでした.ガクッorz
コクワはリリースというか,もう手に取ってすらいません.

その後,また別の沢へ移動しました.
今度は小さい沢だったのですが経験的に良さそうな感じがして,掘ってみるとガロアムシGalloisiana nipponensisが出てきました.
ガロアというのは発見者の名前です.このグループは原始的な直翅系昆虫と考えられています.
個人的には目レベルで初採集でした.

ガロアムシ

あとホソヒラタゴミムシ Pristosia aeneolaがいくつか出てきました.
そして散々掘りまくった末,やっとコイツも姿を現しました.

ポンポンメクラチビゴミムシ

ポンポンメクラチビゴミムシ Trechiama parvusです.実は今日はこれを探しに来ていました.
昨年末にサクライ,ミノオ,ノトを狙って惨敗してるので嬉しい限りです(後脚が欠けてるけど).
採集したとき,Trechiamaにしてはかなり小さいという印象を受けましたが,Ueno(1980)の原記載を確認するとヨシイメクラチビゴミムシ群の中で最小だと書かれていました.
この場所の付近にはイズリハメクラチビゴミムシ Stygiotrechus morimotoi notarumもいるのですが,こちらは採れませんでした.
チビゴミは小石の多い粘土質の層にいるようなので,枯沢でそのようなところを探して掘ります.
今回はこんな感じのところから得られました.
出てきた深さは地表から30cmくらいでした.

その後もドロドロになるまで頑張って探しましたが,追加は得られませんでした.
チビゴミ採集は消耗体力あたりの獲物数が少なくコスパ悪いです.
最後にドロドロになった靴を洗うため川に行き,ついでに網を入れてミゾツヤドロムシ Zaitzevia rivalisを採りました.
本日は自分のHPが0になったのでここで帰路につきました.