2015年12月26日土曜日

クリスマス採集会

師範です.
12月24日,研究室のメンバーにオサ屋の道の厳しさを教えるため,ヨン様,さっとん氏,りん氏と一緒にオサ掘り修行に出かけました.
場所は神戸市北区の山です.
集合はその最寄り駅に9時半…しかし時間になっても誰も来ない.
待っていたら次の電車で残りの3名が到着.なんかいろいろアクシデントがあったんだとか.特にヨン様.
全員そろったところで,まず以前りん氏が行ったことがあるという林道へ向かました.


林道に入ると川が流れていて,周囲はスギが多くやや薄暗い場所でした.
少し歩くと川におりられそうな場所があったので,その周辺から採集を始めることにしました.
目的はオサムシなので,鍬で崖を掘り,越冬中のものを探します.
開始からしばらくして,私が最初のオオオサムシを掘り出しました.
オオオサは川沿いの斜面のような場所でもよく見つかります.
カメラマンのさっとん氏が飛んできてオオオサの写真を撮っていたので,それは彼にあげました.

オオオサムシ

私はその後川でヒメドロを探す片手間,オサを掘っていました.
自分はオオオサしか採っていなかったのですが,ヨン様はマヤサンオサムシを採っていたようです.
さっとん氏とりん氏はまだ何もオサが採れず悔しがっていました.

ふと林道沿いの斜面の上の方を見ると良さそうな崖があったので,全員でその崖のところへ行って掘ってみました.
そしたらアタリの崖だったようで,オオオサがゴロゴロ出てきました.
さっとん氏もりん氏もその崖でようやくオオオサをゲット.
ヨン様は崖の下でみんなのおこぼれを狙っていました.
りん氏は急斜面に立って手にマメができるほど掘っていたみたいです.
その崖だけでかなりの数のオオオサがいました.
全部採ってたら4人分の佃煮くらいはできたと思います.
さらに,さっとん氏は崖のそばにあった倒木の樹皮下からもオオオサを見つけていました.
野外でオオオサが樹皮下で越冬しているのは今まであまり見たことがありません.
崖からは他にもアカバハネカクシやカエルなどが出てきました.

オオオサが多く見られた崖

ここで前半戦を終え,林道を抜けたところで昼食にしました.
前半はオオオサがたくさん採れたので,次はマヤサンが採りたいところです.
ここまでマヤサンはヨン様採集の1個体のみ.
昼食を食べ終えると,後半戦は別の登山道に入りました.
さっきオオオサを採った場所とはまた環境が違います.
その登山道沿いの低い崖を掘ってみると,きれいなオサが...と思いきやスジアオゴミムシでした.
スジアオはまさかのオサ並みの人気だったので,リリースせずさっとん氏とりん氏にあげました.
スジアオの近似種にはアオヘリアオゴミムシというのがいて,こちらならド珍品なので譲りませんが笑.

採集しながらしばらく歩いていると,さっとん氏がついにマヤサンを発見しました.
みんな急いでその近くを掘り始めます.
ヨン様と私がそれに続いてマヤサンをゲット.
ひとりだけマヤサンがまだ採れないりん氏は,必死で掘り続けています.
もうこのあたりからみんな疲れてきて,端から見ると変な集団になってたと思います.
靴がドロドロでえらいことになってる私,
平◯堅とセーラー◯ーンを歌い出すヨン様,
掘った土で泥だんごを作って楽しそうに投げるさっとん氏,
そしてなぜかクロカタビロオサムシばかり掘り出すりん氏…ってなんでやねん!逆にすごい.
クロカタビロはもともと少ない種だったのですが,最近になって関西のあちこちで大発生が報告されているオサムシです.
ただ,冬季に掘って採るにはコツが必要で,粘土質の斜面の低いところを狙うと採れることがあります.
今回も低い崖の斜面から得られました.

その後なんとか全員マヤサンをゲットできました.
4人で相当数のマヤサンを掘りましたが,そのうち黒色型は4,5個体くらいでした.
マヤサンの色彩は,だいたいの産地で黒色型が少数派だと思います.
採りすぎた分のオサムシはリリースしました.
オサ以外にも,セミの幼虫やセンチコガネなどの糞虫も土の中から出てきました.
センチって土の中で越冬するんですね.しかもけっこう硬い土でした.
そういえば小学校の合宿の時,ひとりで地面掘ってたらセンチが出てきた記憶があります.
材割りも少ししましたが,こちらはクロナガオサムシ,ヤマトデオキノコムシ,キイロスズメバチなどが出てきました.
クロナガは崖だけでなく,もろくなった朽木にもよくいるオサムシです.

クロナガオサムシ

マイマイカブリは採れませんでしたが,それ以外で採れるオサはすべて採れたので,このあたりで引き上げました.
りん氏は最後までマイマイが採りたいと駄々をこねていましたが.
あとはこれらを標本にして,クリスマスイブラベルをつけましょう.

<追記>
私はこの日カメラを持ってきていなかったので,写真は後日さっとん氏とりん氏からいただいてアップしました.


最後に,私が把握している範囲でこの日見られた甲虫リストをまとめておきます.

クロカタビロオサムシ Calosoma maximowiczi 4exs.
クロナガオサムシ Leptocarabus procerulus procerulus 2exs.
オオオサムシ Carabus dehaanii dehaanii 多数
マヤサンオサムシ Carabus maiyasanus maiyasanus 多数
クビナガゴモクムシ Oxycentrus argutoroides 1ex.
ホシハネビロアトキリゴミムシ Lebia calycophora 1ex.
スジアオゴミムシ Chlaenius costiger costiger 3exs.
アトボシアオゴミムシ Chlaenius naeviger 1ex.
ヤマトデオキノコムシ Scaphidium japonum 1ex.
アカバハネカクシ Platydracus brevicorni 1ex.
ツヤドロムシ属の一種 Zaitzevia sp. 1ex.
ヒラタドロムシ科の一種(幼虫)Psephenidae gen. et sp. 1ex.
コクワガタ Dorcus rectus rectus 1ex.
センチコガネ Phelotrupes laevistriatus 1ex.
コブマルエンマコガネ Onthophagus atripennis 1ex.
ツヤエンマコガネ Parascatonomus nitidus 1ex.
アオハナムグリ Cetonia roelofsi roelofsi 1ex.
エグリゴミムシダマシ属の一種 Uloma sp. 1ex.
クチキムシ Allecula melanaria 2exs.

2015年12月25日金曜日

2015年のハムシ論文

2015年もあとわずかですね.今年もいろいろハムシを採りました.
一番嬉しかったのは地元でカツラネクイを採集できたことですね.
三田のセラネクイに挑戦して3回ぐらい失敗に終わったのは秘密です.

ここで,ハムシに関する今年の印象に残った論文を少し紹介します.
採集ばかりしてないでちゃんと論文も読んでますアピールも兼ねてます.


◆ Nadein, K. S., 2015. Phylogeny of Diboliina inferred from a morphologically based cladistic analysis (Coleoptera: Chrysomelidae: Galerucinae). Arthropod Systematics and Phylogeny73: 65-83.

ノミハムシ類 25属の系統です.
最近の系統の論文としては珍しく,形態形質のみで系統関係を推定しています.
また,テントウノミハムシ属 ArgopistesをDiboliina亜族に移すことが提案されています.
Diboliina亜族については最後に属への検索表もついているので,同定する際にも役立ちそうな論文です.

◆ Doddala, P. R., Minor, M. A., Rogers, D. J., & Trewick, S. A., 2015. Fifteen into Three Does Go: Morphology, Genetics and Genitalia Confirm Taxonomic Inflation of New Zealand Beetles (Chrysomelidae: Eucolaspis). PLOS ONE, 10: e0143258.

Eucolaspis属はサルハムシ亜科に含まれるニュージーランド原産のハムシです.
この論文では分類学的問題が残されている本属を対象にして,系統関係などを明らかにしています.
ハプロタイプネットワークを見ると,ニュージーランド本土のものは大きく3つの系統に分かれることが示されています.
この3系統は雄挿入器先端の形状,上翅の幅,点刻密度に違いが認められるようです.

◆ Jurado-Rivera, J. A., & Petitpierre, E., 2015. New contributions to the molecular systematics and the evolution of host-plant associations in the genus Chrysolina (Coleoptera, Chrysomelidae, Chrysomelinae). ZooKeys, 547: 165-192.

ヨモギハムシ属 Chrysolinaの利用する寄主植物と系統進化に関する論文です.
本属も分類学的な扱いにコンセンサスが得られてない分類群の一つです.
近縁のOreina属を含めた分子系統解析では,Chrysolina属は多系統になっています.
また,これまでに提唱されている系統関係の仮説検証をAU testで行っています.
Chrysolina属の利用する寄主の祖先形質復元もしていて,シソ科が祖先的になるようです.

◆ Eben, A., & Espinosa de los Monteros, A., 2015. Trophic interaction network and the evolutionary history of Diabroticina beetles (Chrysomelidae: Galerucinae). Journal of Applied Entomology, 139: 468-477.

ヒゲナガハムシ亜科 Galerucinaeに含まれるDiabroticina亜族とその寄主植物との関係を系統的側面から明らかにした論文です.
ここでは,寄主植物が既知のハムシ43種が使われています.
大部分の種は数種の植物のみを利用していますが,一部の種は多くの植物を利用するそうです.
これらのハムシが利用する寄主は,過去に何度もシフトしていると推定されています.
というか,BEASTで寄主利用の進化プロセスの推定ができるんですね.一度やってみたい.

◆ Bukejs, A., & Nadein, K., 2015. First fossil Lamprosomatinae leaf beetles (Coleoptera: Chrysomelidae) with descriptions of new genera and species from Baltic amber. Zootaxa, 3931: 127-139.

バルト海沿岸地域の琥珀からのツヤハムシ亜科 Lamprosomatinaeの3新種の記録です.
琥珀の年代は始新世末期頃です.
ツヤハムシ亜科は日本に6種しかいないのでなじみがないかもしれませんが,タラノキなどによくついてる小さなアレですね,属は違いますが.
化石記録は生物の進化における直接的な証拠ですし,系統樹から分岐年代を推定する際の較正点にも使うことができるので,このような記録は重要だと思います.
自分でも昆虫化石をいつかとってみたいですね.兵庫では新温泉町で出土するようですが,一度も行ったことがない.

◆ Bukejs, A., & Chamorro, M. L., 2015. Two new fossil species of Cryptocephalus Geoffroy (Coleoptera: Chrysomelidae) from Baltic and Dominican amber. Proceedings of the Entomological Society of Washington, 117: 116-125.

こちらはバルト海沿岸地域やロシア産の琥珀からのツツハムシ亜科 Cryptocephalinaeの記録です.
琥珀からのツツハムシ亜科の記録はこれが初めてのようです.
2新種が記載されており,一方は始新世末期,もう一方は始新世末期-中新世初期の琥珀からです.
ハムシの写真も載っていますが,樹脂の中に閉じ込められていて,きれいな状態で保存されているように見えます.

◆ Macedo, M. V., Flinte, V., Abejanella, A., & Chaboo, C. S., 2015. Three New Reports of Subsocial Tortoise Beetles From South America (Chrysomelidae: Cassidinae). Annals of the Entomological Society of America, 108: 1088-1092.

南米にいる亜社会性のカメノコハムシに関する論文です.
カメノコハムシ亜科は2族(EugenysiniとMesomphaliini)で亜社会性が見られ,この論文ではEugenysa martaeOmaspides clathrataの行動について書かれています.
卵,幼虫,蛹は一か所にまとまっており,それを母親が寄生蜂などの捕食者から守るそうです.
このような亜社会性のカメノコハムシの扁平縁は,自身の防衛だけでなく,その子供を守るためにも役立っているのでしょう.
日本には亜社会性の種が分布していないので見てみたいです.

◆ Schmitt, M., & Uhl, G., 2015. Functional morphology of the copulatory organs of a reed beetle and a shining leaf beetle (Coleoptera: Chrysomelidae: Donaciinae, Criocerinae) using X-ray micro-computed tomography. Zookeys, 547: 193-203.

交尾時にハムシの交尾器がどのように使われているかを示した論文です.
ネクイハムシ亜科のDonacia semicupreaとクビボソハムシ亜科のLilioceris liliiを用いています.
交尾中のものを液体窒素またはエタノールで固定し,マイクロCTによってその断面写真を撮影しています.
ハムシの体内で交尾器がどうなっているのかがよくわかります.

◆ Nagasawa, A., & Matsuda, K., 2015. Factors Determining the Host Range of Two Tortoise Beetles, Cassida nebulosa L. and C. piperata Hope (Coleoptera: Chrysomelidae) in Japan. The Open Entomology Journal, 9: 1-6.

日本のナミカメノコハムシ Cassida nebulosaとヒメカメノコハムシ C. piperataの寄主利用に関する論文です.
どちらも主にアカザ科をホストとする種ですが,その寄主選択に違いが見られ,それぞれ異なる要因に制限されていると考えられています.
ナミカメノコでは,集団間でも寄主選択の違いが示唆されています.
ヒメカメノコの幼虫はヒユ科の一部の植物でも育つことができるみたいですが,私自身は野外でヒメカメノコがヒユ科にいるのを見たことがないです.

◆ Nishide, Y., Fukano, Y., Doi, H., Satoh, T., Inoue, H., & Boriani, M., 2015. Origins and genetic diversity of the ragweed beetles, Ophraella communa (Coleoptera: Chrysomelidae), that were introduced into Italy and Japan based on an analysis of mitochondrial DNA sequence data. European Journal of Entomology, 112: 613-618.

ブタクサハムシの遺伝的多様性を調べた論文です.
ブタクサハムシは1995年に日本へ,2013年にはヨーロッパへ移入された,北アメリカ原産のハムシです.
アメリカと日本とイタリアの集団でmtDNAのCOIIの塩基配列を調べたところ,日本産はアメリカ産よりも遺伝的多様性が低いそうです.
また,イタリア産とはハプロタイプを共有していないことから,日本とイタリアの集団は異なる起源を持つことが示唆されています.
どうでもいいですが,今年自分が採ったブタクサハムシは長野の1個体だけでした.

◆ Lechner, R., Kuehn, R., Schmitt, T., & Habel, J. C., 2015. Ecological separation versus geographical isolation: population genetics of the water‐lily leaf beetle Galerucella nymphaeae (Coleoptera: Chrysomelidae). Biological Journal of the Linnean Society, 116: 423-431.

生態的隔離と地理的隔離のどちらが遺伝的分化に寄与するかを検証した研究です.
イチゴハムシ属の一種 Galerucella nymphaeaeで,AFLPマーカーを使って5集団の遺伝的な違いを調べています.
本種にはタデ科食とスイレン科食の2つのエコタイプがあり,地理的に離れているが同じ科の植物を食べる集団間よりも,地理的に近いが異なる科を食べている集団間の方が遺伝的距離が大きくなっています.
すなわち,ホストの違いによる生態的隔離の方が,地理的隔離よりも遺伝的な違いを生み出すようです.

◆ Takizawa, H., 2015. Notes on Japanese Chrysomelidae (Coleoptera), III. Elytra, 5: 233-250.

最後に,今年新たに日本のファウナに加わったハムシについてです.
この論文では,日本からハムシ科の6新種が記載されています.
また,日本産の一部の種で所属の変更も行われています.

2015年12月21日月曜日

東北遠征・後編

どうも最近筋力の衰えを感じ始めたさっとんです.
りん氏に変わって後編は私が担当させて頂きます.

〜二日目〜
泊まったカプセルホテルは抜群の寝心地で,
従業員に起こされるまでぐっすり眠れました.

二日目は思い切って初日とは大きく場所を変えて採集することに.
この判断が功を奏すのか

最寄りの駅から河川敷までタクシーで移動し,いざ突入!


いい感じじゃないですか〜 経験が無いのでなんとなくだけど.

しかし,この付近はすでに他の採集者が入っているみたいで,良さげな物件は片っ端からやられている.
さらに途中から雨も降ってきて,ハードモードに 


鍛え抜かれた豪腕でキタカブリを探すりん氏.


目星をつけていた場所を一通り見終わり,
もうキタカブリは採れそうにないなぁと不穏な空気が漂い始めたとき

りん氏がポツリと
「昨日の水ポチャした場所に戻りたいっす」

こいつ走水性があるんじゃねぇか

しかし,時間的に余裕が無いため,戻ることを断念し二週目に突入,
そしてついにその時はやってきた.




美しい! さすがマイマイカブリ最美麗亜種!


リン氏に譲って頂いたアオオサムシ.
こちらもお初だったので感動。

しかしその後の追加はなく,この旅の幕は閉じた.

 今回の遠征は,強行スケジュールな上に天候にも恵まれず,苦しい採集でしたが,初めてキタカブリを手にした時の感動は素晴らしいものでした.

追記 
関東に戻ったさっとんは,突然の高熱に襲われ体調を崩したのでした.
どうやら筋力だけでなく免疫力も衰えていたようです.

2015年12月20日日曜日

東北遠征・前編

初投稿のりんです.
関東に帰省し動物行動学会後,11月23〜24日にかけて,
キタカブリを主対象としてさっとん先輩と採集に行きました.

普段の採集は,さっとん先輩がタマムシ,私がトンボ.
しかし研究室内ではオサ屋が多く,すっかりオサムシに魅了されての遠征でした.
あの光沢が木からパッカーンで出てくるなんて想像するだけでワクワクもの,
23〜24日は両日とも雨の予報であったが,
関東行ったら東北へ行かざるをえなかった...

〜初日〜
朝5時頃に宿の最寄り駅に到着.
真っ暗で寒かったがむしろテンションが上がり採集を前におおはしゃぎ.
朝食を済ませ,夜明けを待てずに移動を開始.
すぐに河川敷で掘りを開始するも何も出てこず.
雨がぱらつき始めた頃,先輩がアカガネをゲット!
二人ともオサ初心者なため坊主の恐怖があったが,
なんとか回避.

しかし...


少しずつ移動し目的地に到着するも,オサムシはおろか甲虫すら出てこない始末.
同業者の採集痕も少しずつ出始め,場所は良さそうながらも焦りが出始める.
二人して,いねーなあ困った困った(笑)みたいな感じでうろちょろしてたが,
ある場所で大木が横たわっていた.
そして大きな影が!トウホククロナガ!
そして更に光沢のある甲虫が———

アオオサ!
初採集でした.直後にアオオサをもう1頭追加.

更に1時間後には先輩が歓声を上げた.
見に行ってみると



キタカブリ!!!

先輩はキタカブリに歓喜,
私はクロナガ,キタカブリの汁を顔面に受け狂気.

その後昼飯まで私は1時間フィーバーモードに入り次々と探すも収穫0.
...あかん.

昼飯で体制を整えて再度挑戦するも,
二人ともクロナガとアカガネ以外追加が出ず.
疲れが出始めた頃,私は我慢していたあることを敢行する.
それは ”小川渡り”.
小川の向こう側は採集痕が見られないが,案外幅と深さがあるため断念していた.
しかしこのままでは東北坊主になりかねない.
やるしかない.
そう思い小川に入ってみると,水深より長靴が低くなっても,
物理的には長靴に浸水はしてこなかった.

しかしそこは研究室随一の水ポチャ芸人,
助走をつけて...






バッチャーーーン!!!


無事浸水.

笑う先輩をよそ目に向こう岸で採集再開し,無事キタカブリ採集.
喜びというより,安堵でしかなかった.
丁度日の入り頃になり,この日の採集を終えた.




2015年12月19日土曜日

師範の単独ゼミ2 裏六甲

実験のデータまとめたり論文書いたりしないといけないのですが,筋トレも兼ねてまた勝手に出動してしまいました.
ついカッとなって採集した.虫なら何でも良かった.今は反省している.

今回は久しぶりに裏六甲へ行ってきました.昨年はダイモンジソウを探しに有馬付近へ行ったのですが,それ以来かもしれません.
今の時期,フユシャクは飛んでいましたが多くの虫は越冬中なので,それらを探し出して採集します.

まず,前日に地図とにらめっこして決めておいた林道に向かいました.
今年は暖冬のせいか,この時期にシマヘビが途中の道端にいて驚きました.
林道を進むと,こんな感じの小さな枯沢がありました.



その斜面の土を掘ってみると,オオオサムシ Carabus dehaanii dehaaniiやマヤサンオサムシ Carabus maiyasanus maiyasanusが出てきました.どちらも基亜種です.
マヤサンオサは六甲山地を代表する昆虫の一つだと思います.これらは採り飽きたので写真だけ撮って即リリース.
あとはヤセモリヒラタゴミムシ基亜種 Colpodes elainus elainusやナガゴミムシの一種 Pterostichus sp.,ハサミコムシ類ぐらいでした.
プテロの同定はやはり苦手です.持ち帰ってゲニも抜きましたが,ふにゃふにゃでよくわかりませんでした.
ヤセモリヒラタはたくさんいました.


マヤサンオサムシ

マツの朽木があったので割ってみると,ヨツコブゴミムシダマシの一種 Uloma sp.が出てきました.
材割りではよく見かけるグループなのですが,同定はけっこう難しいです.
Masumoto & Nishikawa (1986) のレビジョンを見ると,本属は日本から12種が知られ,下唇基節や前脛節の形状などが重要な分類形質になっているようです.
でもおそらくモトヨツコブゴミムシダマシ U. bonzicaのような気がします.
リリースしたのでちゃんと確認してないですが,モトヨツコブなら以下のような特徴が見られます.
  ・オスの前胸背板は凹陥部に2対の隆起を有する
  ・下唇前基節は広く毛に覆われる
  ・前脛節内縁の基部は緩やかに曲がるだけで湾曲しない

それから水の流れのある別の沢に行き,先日新調した自作ヒメドロネットを使ってみたところ,ツブスジドロムシ Paramacronychus granulatusとマルガムシ Hydrocassis lacustrisが採れました.
ツブスジは林内で少し水が流れるような沢にいることがありますが,六甲山地では初めて見ました.
マルガムシは光の速さでリリース.


ツブスジドロムシ

あと,神戸でノトメクラチビゴミムシ Trechiama notoi (と思われる種) が記録されている場所の近くまで行ったのでダメ元で探してみましたが,やっぱりダメでした.
土の質がイマイチだった気がします.探した場所は火成岩類の有馬層群でしたが,こういう地質でも採れるのでしょうか…
タイプ産地から離れた特異な分布という意味でも興味ありますが,やはり巨大と言われる本種の雄交尾器を見てみたかったです.交尾片も先端が露出するほど大きいそうで,もうチビゴミ界のドウキョウですね.

結局たいした収穫がなかったので林内の落ち葉を持ち帰って自作ツルグレンにかけましたが,昆虫は何も出てきませんでした.
しかし,今日は多少の筋トレにはなったと思います.これで研究室内で腕相撲があっても最弱は免れそうです.