2017年6月23日金曜日

ヒアリの見分け方

ヒアリに関する講習に参加してきました.
先日尼崎と神戸で確認されニュースとなった特定外来生物のヒアリ Solenopsis invictaですが,忘れないうちにここに他のアリとの区別点を書いておこうと思います.
(ヒアリの後に神戸で確認されたアカカミアリは本種によく似ているのですが,下の④の違いで区別できるそうです)

① 大きさは2-6mm

ヒアリのワーカー

② 前伸腹節にトゲがなく,腹柄節は2節

側面

③ 触角は10節で先端2節が大きい

触角

④ 頭楯前縁中央はわずかに突出する(本種に似るアカカミアリはここが突出しない)

頭楯
突出(矢印)が顕著でない個体もあり難しい

2017年6月6日火曜日

ツシマヘリビロトゲハムシ飼育記

5月中旬に対馬で採集したツシマヘリビロトゲハムシをせっかくなので飼育してみることにしました.
まずはホストであるケンポナシの苗木を買って,その葉に産卵させてみようと考えました.苗木は送料込みの1600円ちょいであったのでそれをポチりました.これで準備完了.
以下,観察記録を記しておきます.
※この記事は観察が進むたびに随時更新します.羽化までいかなかったらボツ記事になるかも

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苗木(高さは40cm程度)が届いたので,早速1ペアを移して袋がけしてみることに.

ケンポナシの苗木

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苗木の葉をよく見ると卵を発見!卵は約1mmほどの大きさで,個別に葉に埋め込むように産まれています.葉裏側から見ると,なにやら細い突起のようなものが1本出ていることが多いです.

ツシマヘリビロトゲハムシ卵(葉表側)
ツシマヘリビロトゲハムシ卵(葉裏側)


この後もペアを変えながら何度か産卵をさせました.

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最初に産卵された葉で幼虫が孵化しているのを確認!ここまでシナリオ通り!産卵から孵化まで1週間くらいかかるようです.このハムシはリーフマイナーで,はじめのうちは葉脈に沿って潜葉している幼虫が多いように見えます.

筋状に薄く変色している部分が幼虫のマイン
(穴が空いているのは成虫の食痕)

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孵化ラッシュが始まり,この時点ですでに幼虫は34個体になりました.孵化していない卵もまだまだあり,明らかに産ませすぎたと思って苗木への産卵はここでストップさせました.

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幼虫が少し成長すると,別の場所への"再潜葉"ができるようになります.おそらく今いる場所で食べ進めにくくなるなど不都合が生じた時にするのだと思いますが,いったん外へ出て別の場所に潜り直すことがあるようです.

矢印のところから潜り直した.もともとは左のマインにいた.

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朝確認してみると,マインから出てきてウロウロ歩いている幼虫を見つけました.幼虫ははじめの頃よりひと回り大きくなり,大きいもので目測4mmくらいになっています.リーフマイナーはあまり脚が発達しているイメージがなかったのですが,本種の幼虫は枝をなんなく登ることができるようです.

ツシマヘリビロトゲハムシ幼虫

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ケンポナシの方もだいぶ成長してきました.こんな感じで育てています.


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幼虫が多すぎて最初のケンポナシがボロボロになってきたので,新たにケンポナシとナツメの苗を入れました.ナツメでも幼虫の飼育ができるか不安でしたが,成虫はナツメでの採集例があるのでおそらく大丈夫だろうと与えてみたところ,思った通り幼虫はその葉に潜葉しました.

ナツメの葉に潜る幼虫

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大きくなった終齢幼虫がいったんマインから出て葉の別の場所で蛹室をつくり始めています.孵化してからここまでだいたい4週間前後です.蛹室は体長7mm弱の終齢幼虫がすっぽり収まるくらいの大きさで,ポケット状の構造になっています.通常主脈または側脈に沿ってつくられ,ポケットの入口が葉の先端側を向きます.

蛹室

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一部の個体が蛹化し始めました.蛹室をつくってから蛹化するまで3-4日くらいです.この時点では,まだ成虫のトゲトゲしい感じはあまりありません.ただ,写真からはわかりにくいですが,前胸に相当するであろう部分の棘だけは蛹の段階で確認できます.

ツシマヘリビロトゲハムシ蛹
(見やすいように葉裏から照らしています)

7/11
ついに羽化しました!!!蛹の期間は9-10日くらいでした.羽化は多くの場合夜中に行われるみたいです.成虫は羽化後蛹室にとどまらず外に出てきます.羽化直後は前胸以外真っ白でチャームポイントのトゲも伸びきっていないのですが,そのあとすぐに翅とトゲはのびていき,1-2時間かけて徐々に色もついてきます.成虫は羽化したその日から活動を始めるようで,ナツメの葉を与えると後食していました.

羽化直後の様子

ツシマヘリビロトゲハムシ成虫

まだ終齢幼虫や蛹のものもたくさんいるので,この調子でいけばそこそこの数の成虫が得られそうです.初めてのトゲハムシの繁殖チャレンジでしたが失敗に終わらなくて良かったです.

2017年6月3日土曜日

最近訪れた離島の紹介

最近調査で行った離島を虫屋目線で簡単に紹介します.

加計呂麻島
奄美大島南部の瀬戸内町古仁屋から船で数十分.奄美大島と近いので古仁屋から日帰りでもじゅうぶん行けます.今回初めて訪れましたがとても美しい島でした.港は2か所あり,本数は少ないですがそこからバスで移動することができます.林道があまりないので散策できる場所は限られると思います.昆虫相はやはり奄美大島と似ている気がします.


アオウバタマムシ

対馬
韓国の近くにある島.飛行機とフェリーどちらも利用したことありますが,ここのフェリーは揺れやすいのと時間がかかるので飛行機で行く方がオススメです.島内をバスの移動する場合,運賃表を見れば高くつきそうに見えますが,実は一日フリーパスなるものがあるのでどこへ行くのも実質往復1000円で行けます.虫は大陸との共通種がけっこういます.一部国有林になっている場所があるので採集に行く際は注意が必要です.今回で3度目でしたがまたいずれ来たい島です.


ツシマヘリビロトゲハムシ

佐渡
新潟港から船なら数時間で着きます.カーフェリーとジェットフォイルどっちも利用しましたが,カーフェリーの方が豪華で船旅感もあったので個人的には好きです.離島の中では比較的栄えている印象を受けました.今回は両津港付近に宿泊しましたが,歩いていける距離にサドマイマイ,サドアオオサ,サドクロオサがいるという素晴らしい場所でした.ただ弾丸遠征だったのであまりのんびりする余裕はありませんでした.


サドマイマイカブリ