2016年7月30日土曜日

湿地めぐり

師範です.
今日はN市自然保護協会や県立博物館の方々と一緒に湿地をいくつかまわってきました.
普段は柵がしてあり立ち入れない所もあるのですが,管理されている方に許可をいただいて入らせてもらえることに.



そのうちの一つの湿地にはヒツジグサがわずかにあり,1頭だけガガブタネクイハムシ Donacia lenziがいました.

ガガブタネクイハムシ

ほかにもヒメゲンゴロウ Rhantus suturalis,メダカハネカクシ属の一種 Stenus sp.,ホンシュウチビマルヒゲナガハナノミ Macroeubria similisなどを確認.
あと,ヒルムシロ類が生育するため池でミズスマシ Gyrinus japonicusが群れて泳いでいるのを見ました.今となっては環境省RL絶滅危惧II類のミズスマシですが,私が小さい頃は普通にいたんですよね…しかしこんな場所がまだ身近に残っていたとは驚きでした!

ミズスマシ

2016年7月16日土曜日

師範の単独ゼミ16 関東遠征

師範です.
関東へ調査に行ってきたので,忘れないうちに活動内容を記録しておきます.

11-VII-2016
朝7時,千葉到着.一年ぶり.
夜行バスはけっこう疲れた.
調査地に向かい,炎天下の畑でハチの調査をする.
マメハンミョウ Epicauta gorhamiがたくさんいた.

マメハンミョウ

12-VII-2016
調査焼けで腕がヒリヒリしてくる.
明日六甲山の昆虫調査を急遽協力してもらえないかとメールが来るも,どこでもドアを持っていないのでお断りした(力になれずスミマセン).
調査中に農家の方からスイカをいただいたので,宿に戻って一人スイカ割り.

13-VII-2016
ちょっと天気が悪い.
別の農家の方に「ひとりで来たの?えらいね〜頑張ってね!」と激励の言葉をいただく.
午後は雨が降ってきたので調査を中止し,キアシネクイハムシ Donacia bicoloricornisの池に行ってみた.最初の1頭は感動したが,開始10分で普通種となる.

キアシネクイハムシ

14-VII-2016
ビーティングのやりすぎで手が疲れ,花粉症も発動.
夕方から雷のため,早めに調査を切り上げる.
宿に戻ってサンプルの整理をした.

15-VII-2016
調査最終日.記録的豪雨.
一応調査地に行ってみたが,目的の生物はまったく活動していなかった.
しかたなく他の場所へ移動を試みるも,関東の路線の複雑さに迷いまくる.

16-VII-2016
せっかく遠征したので,ついでに栃木まで一狩り行くことに.
スジキイロカメノコハムシ Cassida nobilisを目指して借りたチャリを飛ばすが残念な結果に終わる.
さすが日本産カメノコハムシ四天王(キイロ,スジキイロ,クロ,イカリアオ)のひとり…手強い…

2016年7月1日金曜日

2016年上半期のハムシ界

師範です.
今日から7月ですか…早すぎる…
2016年に入って半年経ちましたが,すでにハムシに関する文献がたくさん出ています.
とても全てをチェックすることはできませんが,その一部をメモしておきます.

個人的に一番ためになったのは,ハムシ上科の系統のレビュー(Haddad & McKenna, 2016)ですね.ハムシでは亜科間の系統関係でさえコンセンサスが得られていないのが現状だと思います.
このほか,自身で合成した防御物質を使うハムシより寄主植物由来の防御物質を利用するハムシの方がアリに捕食されにくいという論文(Zvereva et al., 2016),ズグロアラメハムシ Lochmaea capreaeの2種類のホストレースを使って寄主選好性が遺伝的に決まることを明らかにした論文(Soudi et al., 2016),Paropsis atomariaの幼虫で見られる色斑と鳥による捕食率の関係を調べた論文(Tan et al., 2016)なども興味深かったです.
あと,Cassida viridisの北米からの記録(Marshall & Paiero, 2016)にも驚きました.そもそもCassidaは基本旧世界に分布するグループで,400種以上いるうち新大陸に分布するのは本種以外に5種が知られるだけです(移入の疑いのある種もいますが).

そして日本のハムシ相に以下の新メンバーが加わりました.

【国内初記録】シラタカハムシ Chrysolina seriepunctata
分類学的位置がよくわからないハムシだそう.
今のところ日本の記録は山形のみ(齋藤・南,2016)?

【国内初記録】ネッタイアカクビボソハムシ Lema lacertosa
日本では石垣島と西表島から見つかっています.
ホストはツユクサ類(Suenaga & Miyauchi, 2016).

【新種】サキシマヒゲブトコマルトビハムシ Clavicornaltica mizusawai
石垣島の標本をもとに記載された,見た目ハムシっぽくないハムシ.
FITで雄ばかりが採れるとのこと(Suenaga & Yoshida, 2016).

また,少し前から千葉で確認されていた移入種 Podagricomela weiseiが東京でも見つかり,カラタチトビハムシという和名が提唱されるとともに,その詳しい生態などが報告されました.
本種は中国原産のようで,ホストはカラタチなどの柑橘類(南ほか,2016).

[References]
◆ Haddad, S., McKenna, D. D., 2016. Phylogeny and evolution of the superfamily Chrysomeloidea (Coleoptera: Cucujiformia). Systematic Entomology.
◆ Marshall, S. A., Paiero, S. M, 2016. Cassida viridis (Coleoptera: Chrysomelidae), a Palaearctic leaf beetle newly recorded from North America. The Canadian Entomologist, 148(2): 140-142.
◆ 南雅之・宮内博至・滝沢春雄・斉藤明子・深谷信一・鳥倉英徳, 2016. 外来種カラタチトビハムシ(新称)における知見. 月刊むし, (544): 44-47.
◆ 齋藤諭・南雅之, 2016. 日本初記録のシラタカハムシについて. 月刊むし, (544): 12-15.
◆ Soudi, S., Reinhold, K., Engqvist, L., 2016. Genetic architecture underlying host choice differentiation in the sympatric host races of Lochmaea capreae leaf beetles. Genetica, 144(2): 147-156.
◆ Suenaga, H., Miyauchi, H., 2016. Lema (Lema) lacertosa LACORDAIRE (Coleoptera, Chrysomelidae) Newly Recorded from Japan. Elytra New Series, 6(1): 15-18.
◆ Suenaga, H., Yoshida, T., 2016. Two New Species of the Genus Clavicornaltica (Coleoptera, Chrysomelidae, Galerucinae) from Taiwan and Ishigaki-jima Island, Japan. Elytra New Series, 6(1): 1-9.
◆ Tan, E. J., Reid, C. A., Elgar, M. A., 2016. Colour pattern variation affects predation in chrysomeline larvae. Animal Behaviour, 118: 3-10.
◆ Zvereva, E. L., Kozlov, M. V., Rank, N. E., 2016. Does ant predation favour leaf beetle specialization on toxic host plants? Biological Journal of the Linnean Society.